03
きのうの朝、雨が降っていたけれど、妻と僕はいつものようにマンション前の平塚八幡山公園に犬の散歩に行った。すると、いつものように子猫がよって来た。
それは最近、そこでよく見かけるメスの子猫で、捨て猫らしかった。すごく可愛らしい顔をした人なつこいやつで、いつも散歩のあいだずっと僕たちの足にまとわりついて離れない。
けれど、その朝は、いつもと様子が違った。
よく見ると、右前足が不自然な方向に折れ曲がっている。
自転車に轢かれたのだろうか? それとも、誰かに踏み付けられたのだろうか? 顔には鼻血のようなものも付いていた。痛くて痛くて、しかたないのだろう。雨の中、子猫はまるで悲鳴のように鳴き続けていた。
可哀想で、見ていられなかった。だが、部屋に連れ帰るわけにはいかなかった。僕たちのところにはすでに老いたパグ犬がいるし、マンションでは犬や猫は1匹までしか飼育できないルールになっているから・・・。
妻と僕は心を鬼にして、怪我をした子猫を見捨てて部屋に戻った。もう、忘れてしまうつもりだった。きっと誰かが拾ってくれるさ。そう思おうとした。
けれど・・・忘れてしまうことはできなかった。妻も同じ気持ちらしかった。
20分後、朝食の途中で、僕たちは苦笑いをしながら、傘をさして前の公園に戻った。そして、木の下でうずくまっていた子猫を抱き上げて部屋に連れて帰った。
さっそくクルマで獣医に運び込み、レントゲンを撮ってもらった。幸いなことに骨折ではなく脱きゅうで、全治1ヵ月という診断だった。ついでに、避妊手術とワクチンの接種とノミ取りをしてもらうことにした。痛み止めの注射をしてもらった子猫は、丸くなって眠っていた。
だが、もちろん、それでハッピーエンドにはならない。
子猫は3日間、入院することになった。そして、その後の1ヵ月はギプスを嵌めて安静にしている必要があるらしかった。さて・・・その1ヵ月をどこで過ごさせるか? さらに、その後をどうするか? また前の公園に捨てるなんて、とてもできそうにない。
人生に悩みは尽きないのに、妻と僕はまたひとつ、悩みを抱えてしまいました。やれやれ。
ところで、同じ日に、町田に住む妹からツバメの雛を拾って困っているという電話が入った。妹もしかたなく、子ツバメの母親になって給餌をしているらしい。うーん。妹も大変そうだけど、でも、やっぱり、ツバメの雛より子猫のほうがもっと大変そうだな、これから。