Diary 雑記

10

風邪が治らない。

12月に南の島から帰国してすぐに風邪をひき、1ヶ月以上が過ぎた今も治らない。

あまりの具合の悪さに2、3日寝込む。するとかなり回復するので、また仕事を再開し、夜は深酒する。そうするとたちまち具合が悪くなる。また2、3日寝込む。回復すると仕事とお酒を再開する。また具合が悪くなって、2、3日寝込む。その繰り返しである。

それにしても、こんなにしつこい風邪は初めてだ。発熱と食欲不振と下痢と嘔吐のおかげで58キロ近くあった体重が55キロを切ってしまった。

熱が上がってベッドにぐったりと横になっていると、しばしば父のことを思い出した。父は去年の今ごろ、全身に転移した末期癌の宣告を受けて病院のベッドに横たわっていたのだ。

もう2度と元気になれないと知っていたはずの父は、あの時、ベッドの中でどんなことを考えていたのだろう? 病室の窓からの景色を、どんな思いで眺めていたのだろう?

脊椎カリエスに冒され病床で執筆を続けた正岡子規や、肺病で入退院を繰り返していた石川啄木のことも考えてみた。ああ・・・重い病の床で、彼らはどんなふうに生きる希望を繋いでいったのだろう? 夜が来るたびに、どれほどの絶望が彼らを襲ったのだろう?

ベッドの中で、古い石川啄木の歌集を広げてみた。

はづれまで一度ゆきたしと
思ひいし
かの病院の長廊下かな。

病院の窓によりつつ、
いろいろの人の
元気に歩くを眺む。

目さませば、からだ痛くて
動かれず。
泣きたくなりて、夜明くるを待つ。

真夜中にふと目がさめて、
わけもなく泣きたくなりて、
布団をかぶれる。

話しかけて返事のなきに
よく見れば、
泣いていたりき、隣の患者。

ぼんやりとした悲しみが、
夜となれば、
寝台の上にそつと来て乗る。

熱があるせいで、僕はたちまち疲れて歌集を閉じる。そして、天井の木目模様をぼんやりと眺める。理由のない不安が、たちまち全身を満たす。

ああ、死に瀕していた父もきっと、こんな不安に・・・いや、この数百倍の不安に耐えていたのだろう。そう思うと、あまり見舞いに行かなかったことが申し訳ない。健康というのは、どんなものにも代えがたい、かけがえのないものだ。病気になって、つくづく思う。

さて、今度こそは無理をしないで、完全に風邪を治してしまおう。そう思いつつ・・・

咳き込みながらも煙草を吸い、喉が乾いたから冷たい「レモンサワー」でも飲もうかな・・・一杯だけなら大丈夫かな・・・それともビールのほうがいいかな・・・エビスにしようか、スーパードライにしようか・・・などと考えているのである。

これじゃあ、いつまでたっても、風邪は治りそうもないな。

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