Diary 雑記

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10日ほど前の3月19日の晩のこと。執筆中だった「躾けられたい」という小説の第三章を書き上げた。この小説の締め切りは3月末日だったのだが、第四章までのつもりで書いていたので、「あと一息」という感じだった。

あと10日ある。これなら、何とか締め切りに間に合うだろう。

僕はほっとしながら、執筆をやめた。これから入浴し、食事とワインを楽しむつもりだった。

その時、何が起きたのか、自分でもわからない。なぜか、僕は書き終えた第三章の原稿3万字を消去してしまったのだ。

原稿が消えてしまうと怖いので、バックアップのフロッピーディスクをいつも2枚も用意している。それにもかかわらず、ぼーっとしていた僕はその2枚のバックアップも消去してしまった(なぜ、そうなったのかは、面倒なので説明しません。思い出すだけで鳥肌が立ちます)。

数分後、僕はそのことに気づいた。そして、猛烈なパニックに陥った。小説のことでこれほどの衝撃を受けたのは、1997年の夏に河出書房新社の編集者に、書き上げた長編小説を「ボツ」にされて以来のことである。

あの時は辛かったけれど、また書き直せばいいだけのことだった。

あの時、僕はゆっくりと仕切り直しをし、「死者の体温」を書くことができた。

だが、今回はそうはいかない。出版社の人々が僕の原稿を待っているのだ。校正士も印刷所も待っているのだ。

おまけに、「躾けられたい」はその出版社の文庫創刊第一弾として出版される予定だったのだ。原稿を落とすわけにはいかなかった。

1997年には寝込んでしまえばそれで良かった。実際、あの時は数日にわたって寝込んだ。だが、今回はショックで寝込むヒマなどなかった。

翌日から、僕は「失われた3万字」を取り戻すべく猛烈なペースで執筆した。

普通、僕は「1日2000字」をノルマにしている。そのペースだと、3万字を取り戻すには15日が必要だという計算になる。けれど、そんなペースでは絶対に締め切りに間に合わない。僕はいつもの5倍、1日に1万字のペースで書いた。そして、たった3日で失われた分を取り戻した。

やればできるものです。ふう。

そんなわけで、4月25日に予定通り、「躾けられたい」が出版されます。みなさま、お楽しみに。

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