Diary 雑記

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「一年でいちぱん好きな季節はいつですか?」

そう訊かれるたびに、「夏です」と答えていた。ずっと夏が好きだったのだ。

けれど、最近の僕は夏が来ると、少しうんざりした気持ちになる。

そして、「早く秋にならないかなあ」と考えたりしている。

夏が好きだったはずなのに……この心境の変化は何なんだろう?

そもそも僕は夏のどこが好きだったのだろう?

僕は考えた。そして、思いついた。

昔はあって、今はなくなってしまったもの……それは夏休みなのである。

そうだ、夏休みだ。

小学生だった頃から、僕は夏休みが大好きだった。学校に通うという拘束がなくなり、好きなことができるのが嬉しくてならなかったのだ。

その何ヵ月も前から、僕は夏休みを心待ちにした。そして、大学を卒業するまで、いつも夏休みを満喫した。

友人たちに誘われればどこにでも出かけたけれど、僕はひとりきりでいるのを苦にしない性格なので、自室にひとりでごろごろしているのも楽しくてしかたなかった(僕は夢想家なので、自室のベッドに寝転がって、ひとりで空想しているのがとても好きなのです)。

だから、夏休みの終わりが近づくと、いつも泣き出したいような気持ちになったものだった。

大学を卒業して社会人になってからも、僕は一週間から十日ほどの夏休みをいつもとても楽しみにしていた。何ヵ月も前から妻とふたりで夏休みの計画を立て、旅行に行ったり、キャンプをしたり、バーベキューをしたり、海やプールで泳いだりしたものだった。

会社を辞めて専業の作家になってからも、しばらくのあいだはちゃんと夏休みを取っていた。けれど、ここ10年ほどは仕事が立て込んでいて(書くのが遅い僕が悪いのですが)、夏休みを取ることができなくなってしまった。唯一の息抜きだった海外のビーチリゾートへのバカンスへも、この一年半は一度も行っていない。

去年も一昨年も一昨々年も、その前の年もそのまた前の年も、僕はずっと自宅にこもって小説を書き続けていた(去年は無理して節電に努めたら、熱中症になりました)。そして、テレビのニュースで行楽地で夏休みを楽しむ人々を見て、ものすごく羨ましい気持ちになっていた。

もちろん、今年も同じである。自宅にこもり、窓を閉めてエアコンを点け、溜め息を漏らしながらも、ただ、ただ、ワープロに向かっている。

「出版社の編集者たちには夏休みがあるのになあ。一緒に仕事をしてるのに、ずるいなあ」

などと思っている。

でも、しかたがない。誰に強いられているわけでもなく、自分の好きでやっている仕事だ。

というわけで、夏休みのない夏を、今ではあまり好きにはなれないのです。まあ、夏に限らず、秋も冬も春も、仕事ばかりなんですけどね……でも、やっぱり、夏には夏休みがないとねえ。

さて、愚痴はやめて仕事をします。

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