Diary 雑記

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ほとんど毎年そうしているように,2013年の大晦日の夕方,僕は妻とふたりで近くを流れる恩田川に「今年最後の夕日」を見に行った。朝寝が大好きな僕には初日の出を見ることができないので,その代わりみたいなものだ(大晦日に限らず,僕は夕日を眺めるのが大好きなのです)。

西の空を鮮やかな朱に染めながら沈んで行く「今年最後の夕日」を眺めながら,妻と僕は恩田川沿いの遊歩道をゆっくりと上流へと向かった。

足るを知る。

ここ数年,僕はその言葉を心に刻むようにして行きてきたつもりだった。

そう。僕は25年にわたって大好きな人と暮らし,20年にわたって大好きなことを仕事にし、今は可愛い猫どもに囲まれ,決して金持ちではないけれど,経済的に貧窮することもなく生きている。大好きな海外への長いバカンスには今年も行けなかったけれど,ふたりの猫シッターさんたちが来てくれるおかげで、毎月一度か二度は短い旅行にも行けるようになった。

だとしたら、ほかに何を望めというのだろう?

2013年に僕は大幅に加筆修正した「女が蝶に変わるとき」を含む6冊の本を世に問うた。どれも渾身の力を込めて書き上げたつもりだった。

けれど、結果として,これらの本は大ベストセラーになったというほどには売れなかった。2013年にいちばん売れたのは「甘い鞭」で,これは5年も前に書いたものだ。おまけに、この本が売れたのは僕の手柄ではなく,檀蜜という際立った女優が存在したおかげだった。

そんなわけで、2013年の僕は「もっと本を売りたい」「もっとたくさんの人に読んでもらいたい」「本を売って,編集者たちを喜ばせたい」と、そんなことばかり思っていたのだ。ベストセラーを出した作家たちを,羨ましく思いながら暮らし続けたのだ。

けれど、2014年には、もうそれを思うのはやめよう。そして、自分にできることだけを……つまり、より良い本を書くための努力だけを……ただ、ひたすらに続けよう。

今,できることだけを、懸命にする。それ以外は期待しない。

2013年の大晦日に,空を染めて沈みゆく最後の夕日を見つめながら,僕はそう心に誓ったのでした。

みなさま、今年もよろしくお願い致します。

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