Diary 雑記

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毎年そうしているように,2014年の大晦日にも妻とふたりで一年の最後の夕日を見に行った。自宅近くの小高い丘の上である。

東名高速道路の向こうに沈んでいくオレンジ色の夕日が、空に浮かんだ雲の縁を美しく染めていた。百羽を超えるムクドリの群れが、まるで魚群みたいに夕暮れの空を旋回していた。晴れてはいたが、乾いた風が少し冷たかった。

「今年はいい年だったね」

隣に立った妻が言った。

「うん。いい年だった」

今まさに沈もうとしている夕日を見つめて僕も頷いた。

2013年には落ちてしまったワインエキスパートの二次試験(テイスティング)に、2014年の妻は全問正解で合格した。

全問正解は快挙としか言いようがない。

妻の努力を間近で見ていた僕にとっても、それは非常に嬉しい出来事だった。

僕自身のほうは、2014年には本は3冊しか出せなかった。けれど、年明けには「小説現代」への連載も始まるし、2月にはTO文庫から「背徳」という作品集も出る。徳間書店への新作の執筆も珍しく絶好調である。猫たちは元気だし、僕たち夫婦も元気だ。

それほど満ち足りた気持ちで一年を終わるのは、実に久しぶりのような気がした。

それでも、一年を通していい時ばかりだったわけではない。

9月の二次試験まで、妻は毎日毎日、うんざりするほどワインテイスティングの勉強をしていた。それはもう、ワインなんか飲みたくないと思うほどだったらしい。

僕のほうも、9月下旬から始めた徳間書店の新作の構想が、かつてないほどに難航し、毎日毎日、泣きたいような気持ちになった。

それについては、二ヵ月前にこのコーナーで書いたのだが、その後もプロットができず、本当に苦労した。その上、何とか書き上げたプロットは編集長に気に入ってもらえず、僕はまた泣きながら(比喩です)プロットを新たに書き直し始めた。

11月の半ばまでは、そんな苦しい日々が続いた。「小説現代」に書いた「蜘蛛と蝶」も、なかなか及第点がもらえず、何度も直しが入り、ちょっと自暴自棄になっていた(作家を辞めた時のことを、かなり真面目に考えていました)。

光が差したのは、11月15日だったか、16日だったか……とにかく、あの日,急に閃いた。真っ暗な洞窟の中に、頭上の小さな割れ目から一筋の光が差し込むように、突如として閃いたのである。

そういう経験をしたのは本当に久しぶりだった。

それから数日で、僕はプロットを書き上げた。このプロットを徳間書店の編集長は絶賛してくれた。その直後に、「小説現代」の女性編集者が「蜘蛛と蝶」にオーケーを出してくれた。

世の中には努力をしても報われないことがたくさんある。

今では僕はそれをよく知っている。

けれど、うまくいかない時にこそ、ひたむきに、地道に努力を続けなければならない。きょうできることを、必死で続けなければならない。

「高みに行くためには、小さな一歩を繰り返すしかないのだ。そうすることでしか、高いところへは行けないのだ」

去年はそういうことを思い知らされた年でした。

今年も頑張ります。近道を探すことなく、真摯に、必死に、誠実に、一歩一歩、歩き続けます。

みなさま、今年もよろしくお願いいたします。

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