Diary 雑記

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月刊文芸誌「小説現代」で4回にわたって続いた「蜘蛛と蝶」の連載が終わった。読んでいただいたみなさま、ありがとうございました。

ところで、この最終回となる第四回目のゲラの校正では、かなりの問題が起きた。作品の時系列に関する大きな問題である。

最初の原稿では、主人公・瑠璃子の結婚式は9月第三週(2014.9.21.大安吉日)に行われるはずで、友人の美和はその一週間後の第四週(2014.9.28)に挙式をすることになっていた。

けれど、校正士さんが作ってくれた作品の時系列表によれば、9月第三週には絶対に瑠璃子は結婚式を挙げられないことがわかった。瑠璃子は婚約者と9月10日に結婚式場に打ち合わせに行くのだが、そうすると挙式の日までに11日間しか時間がなくなり、このあいだに起きるさまざまなことがおかしなことになってしまうのだ。

実は、こういうことは過去にも何度かあった(僕はいい加減な作家なのです)。でも、そういう時には、最初に戻って書き直し、つじつまを合わせればいいだけのことだった。

けれど、今回はそうはいかなかった。第三回まではすでに「小説現代」に掲載されてしまっているのだ。

どうしよう? どうしよう? どうしよう?

僕はパニックに陥りかけた。

だが、あちこちを懸命に修正し(瑠璃子の結婚式を10月の第三週・仏滅に変更しました)、どうにかこうにか、かつじつまを合わせることができた。ふう。

それにしても、校正士さんが作ってくれた作品の時系列表、実に見事である。芸術的でさえある。

この時系列表を読めば、「蜘蛛と蝶」の物語が2014年7月20日に始まり(33歳の瑠璃子が酉年なので、物語が2014年のことだとわかる)、結婚詐欺師の男と7月27日に初めて会い、二回目のデートを30日にしたということが一目瞭然なのである。

それだけでなく、男が8月10日に瑠璃子の家に行って両親に会ったということや、8月24日にふたりでマンションの内覧をしたということ、9月3日に瑠璃子が産婦人科に行って妊娠を告げられたということなどなど……何もかもが一目でわかるのだ(僕は知りませんでした)。

「すごいっ!! すごすぎるっ!!」

校正士の前で土下座をし、床に額を擦り付けたいような気分になった。

思い起こせば、「1303号室」という本を書いていた時には、校正士から「この部屋からは海は見えません」という指摘をされたことがあった。僕でさえ書いていなかった室内の見取り図を、彼は書いてくれていたのだ。

そのほかにも、校正士には助けられることが多い。

「呪怨」では、「伽倻子が殺された部屋は、そこではありません」という指摘を受けたこともあった。ほかの何かの作品で僕が「猫の手」と書いた時には、「猫に手はありません。前足です」と指摘された(笑)。

校正士がいなければ、本はできないと言っても過言ではない。それなのに、完成した本には校正士の名はまったく記されない。

彼らは本当に日陰の存在なのだ。

今まで僕の本を担当してくれた校正士のみなさま、本当にありがとうございました。この場を借りて感謝いたします。

それから、僕と一緒に悩んでくれた講談社の安藤茜さん、ご迷惑をおかけしました。

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