Diary 雑記

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昔、作家の宮本輝さんが「54歳で54冊目の本が出た」と何かに書いていた。

それを読んだ時には、気が遠くなるような気がした。

54冊というのは天文学的な数値に思われたのだ。

当時の僕はデビューしたばかりで、年に一冊の刊行を目指していたが、それさえままならない状態だった。

「一生のうちに10冊の本が出せたら、望むことは何もないな」

あの頃の僕はそんなふうに考えていたけれど、同時に、それは無理だとも感じていた。

あの頃は書いても、書いても、編集者がOKを出してはくれなかった。

それでも、僕は必死に書き続けた。この20年はほとんど一日中、本のことばかり考えていたと言ってもいいほどだった。

この8月、二冊の本が出た。

僕の計算が正ければ、講談社から出た『蜘蛛と蝶』が53冊目である。

そして、角川ホラー文庫から出た『殺意の水音』が54冊目ということになる(単行本から文庫化されたものや、再文庫化されたもの、コミックスや海外版は除く)。

そうなのだ。宮本輝さんと同じように、僕も54歳で54冊の本が出せたということなのだ。

たくさんの本を出すというのが目的ではないし、つまらないものをたくさん書いても意味はないのだけれど……それでも、感慨のようなものがないわけではない。

たくさんの本が出せたのは、僕を執筆に専念させてくれている妻と、アドバイスを与え続けてくれる編集者たち、そして、読者のみなさまのおかげである。

特に、読者のみなさま。

みなさまが読んでくれるから、僕は本を書いていられます。

ありがとうございます。これからも、よろしくお願いいたします。

55冊目の新刊は年明け早々に光文社文庫から出る予定です。

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