Diary 雑記

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知り合いの骨董品店の店主に勧められ(そそのかされ?)、妻が古物商の免許を取った。そして、その骨董品店の店主に言われるがまま、月に何度か、骨董市に出店するようになった。

磁器製品とガラス製品を中心とした西洋アンティークの店である。

これはあくまで妻の仕事であり、僕は骨董市に荷物の搬入・搬出だけを手伝って、仕入れにも販売にもいっさい口を出さないつもりだった。

最初は本当にそのつもりだった。

けれど……すぐ脇で、とても楽しそうにしている妻を見ていると、僕もむずむずしてしまった(妻は今も僕の隣で、仕入れた商品の説明書を書いたり、値札つけをしたり、商品の並べ方を考えたり、次に何をし入れるかを考えたりしています)。

十数年にわたって僕は小説を書くこと「だけ」を仕事にしてきたから、ほかの仕事をしている妻が羨ましい。

もっとはっきり言えば、「僕にも手伝わせて」「僕も一緒に働きたい」「仕入れにかかわらせて」ということなのである。

そんなわけで、この夏、妻が各地の骨董市に店を出す時には(執筆があるので、毎回ではありませんが)、僕もノコノコと妻について行った(妻にはいつも、「家にいて仕事をしていなさい」と言われましたけど)。

そして、店では妻とふたりで西洋アンティークの数々を売った(「いらっしゃいませ」「お安くしますよ」「ありがとうございました」「またお越し下さい」)。

たいして儲かるわけではない。それどころか、何も売れず、骨董市への出店料で赤字になってしまうことも少なくない。

けれど、十数年にわたって自宅にこもり続けていた僕には、この仕事は新鮮で、刺激的で、なかなか楽しい(室内はいいけど、炎天下の露天は辛いですが)。

妻とふたり、力を合わせて働けるというのも僕には嬉しい(夫婦だけあって、連係はいいのです)。

店を訪れるお客さんたちと接していると、かつて広告の営業をしていた頃のことを思い出して懐かしくなる。

ひとりきりの仕事(執筆のこと)は大好きだけれど、他人を相手に働くのも悪くないなあ。

僕の仕事は小説を書くことなので、のめり込むつもりはない。妻にも「のめり込むな」と言われている。

けれど、妻がこういう仕事を始めたことを、今、僕は心から嬉しく思っている(妻の主力商品のひとつは、スペインのリヤドロ社の磁器製人形ですが、これはどれも非常に美しくて、非常に洗練されていて、うっとりとするほど可愛いのです。売り物ですが、僕は日々、見とれています)。

それにしても、おとなしくて、非力で痩せっぽちで、引っ込み思案なところのある妻に、こんなバイタリティがあったとは驚くばかりである。

頑張れ、弘美。頑張れ、弘美。

妻が骨董市に出かけて行くたびに、自宅に残る僕はその背中に熱いエールを送っているのであります。

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