Diary 雑記

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 8月半ばに河出書房新社から「1303号室」が出版された。その数日後の新聞に、71才の父の死体を1年以上も自宅に放置していたとして、老人の息子が死体遺棄容疑で逮捕されたという記事が載っていた。

逮捕された38才の無職の男は「父は昨年6月ごろに死亡したが、どうしていいのかわからず、そのままにしていた」と供述したという。男は父親とふたり暮らしで、昨年の初めに会社を解雇され、その後は退職金で細々と暮らしていたらしい。発見された時、父の死体は布団に横たわっていたという。

どうやら特別な事件性はなく、この71才の父親は自然死したようだが、僕は少なからず驚いた。

警察にも親戚にも近所の人にも知らせず、死亡届けも出さず、死亡した肉親の死体をそのまま1年も部屋の中に放置しておくなんて・・・この38才の男がしたことは、「1303号室」の主人公の「幸世」が母の死体にしたことと、まるっきり同じだった。

「どうしたらいいのか、わからなかった」という男の供述も、僕が描いた「幸世」の思い、そのままだった。

9月8日には光文社から「死人を恋う」という本が出版になった。

だが、この本がまだ印刷所にまわされる前に、関西で自殺サイトを悪用した連続殺人事件が発覚した。

今度は僕はものすごく驚いた。

死にたがっている人間を自殺サイトを使っておびき出す・・・その犯人の手口は、「死人を恋う」の主人公「石原」の手口とそっくりだったからだ。まるでこの犯人は、僕の本を読んで犯行を思いついたかのようだったからだ。

いったい、どうしてこんな偶然が続くのだろう?

死者の体温」「処刑列車」「殺人勤務医」「自由殺人」「湘南人肉医」「復讐執行人」・・・これまで僕はずっと、異常な心理によって他者を殺害する人々を描いてきたつもりだった。逆に言えば、僕が描くような人々は僕の想像の産物であり、実際には存在しないのだ。そう思って来た。けれど、そうではないのかもしれない。

この現実社会は僕が想像するよりずっと病み始めているのかもしれない。社会の異常さはすでに、僕の弱小な想像力を超えてしまっているのかもしれない。

僕は社会現象を描こうとしたことなんて、一度もなかったのに・・・。

今はただ、電車を乗っ取って次々と人を殺すなんていう事件や、ずっと昔にした約束を果たすために人を殺すなんていう事件が起きないことを祈るばかりである。

最近では、何か異常な事件が起きると、その犯人が「自分は大石圭の大ファンだ。大石圭が殺せと言っているから殺した」と言うんじゃないかと思って、僕はびくびくしています。

次はいい人しか出て来ない、ハッピーエンドの純愛モノでも書こうかな?

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