Diary 雑記

18

どこか遠いところに引っ越しをしようかな・・・と考えている。

今いる平塚という街が嫌いなわけではない。平塚は海が近く、都心への便もよく、気候も温暖ないい街である。おまけにここはマンションの10階で、眺望も抜群だし、大きな公園に面しているので駅から近いわりには静かである。

あまり居心地がいいもので、ここに16年も暮らしてしまった。だが、最近、部屋の狭さが気になってしかたない。

我が家は1LDKだから寝室のほかには、リビングダイニングキッチンがあるだけである。

もちろん、僕の仕事部屋など存在しない。

そんなわけで、僕は毎日ゲリラのように、時にはキッチンテーブルで、時にはキッチンカウンターで、時にはソファの前のローテーブルで、時には妻の鏡台で、時にはベッドに寝転んで、あるいは床に腹ばいになって・・・というふうに、空いている場所を探して執筆をしている。

もちろん、このままでもいいのだが、時々、「自分だけの書斎がほしいなあ」と痛切に思ってしまう。

妻もできれば僕に、書斎にこもってもらいたいと思っているらしい。1LDKにふたりでいれば、ほとんど1日中、顔を突き合わせていることになる。それではさすがに妻も息が詰まるだろうし、僕の仕事中は掃除もできない。近所の友達も呼べない。

そういうさまざまな理由から、僕たちはついに引っ越しの計画を練り始めた。

どこへ移ろうか?

それを話し合うのは非常に楽しかった。僕には通勤の義務がないから、国内ならばどこに住んでもいいのである。いや、バリ島やモルジブ諸島やミクロネシア諸島に暮らすことだって・・・いやいや、キューバやタスマニア島に暮らすことさえ可能なのである。

「ああっ、小説家でよかった」

今回ほど、しみじみそれを実感したことはなかった。

我が家の引っ越し先として、現在、もっとも有力なのが東京湾の向こう側に横たわる房総半島である。房総半島は都内からの交通の便がとても悪く、とても田舎だけれど、静かだし、不動産も安いし、大好きな海も近い。何より冬でも霜が下りないらしい。

寒さが苦手な僕たち夫婦にとっては、うってつけの土地である。

つい先日、僕たちはこの房総半島の先端の小さな漁村に格好の場所を見つけた。太平洋が一望できる素晴らしい物件である。

ただ、実際に引っ越しをするとなると、迷うこともないではない。

僕は最近の小説のほとんどを湘南地区を舞台にしている。理由は簡単。取材に出かける手間が省けるからだ。

ということは・・・もし、引っ越したら、今度は房総半島を舞台にした小説を書かなくてはならないことになる。

うーん。では、次は「房総60人殺し」だろうか?

悪くないような気もする。

しかし、僕たちが引っ越そうとしている小さな漁村で60人もの人間を殺したら、誰もいなくなってしまうのではないだろうか?

どうしようかな?

湘南地区を死体でいっぱいにした僕ではあるが、迷いは尽きないのである。

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