Diary 雑記

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いつものように人間ドックで健康診断を受けた。

今まで胃の検査ではバリウムを飲んでいたのだが、今回は鼻からチューブを差し込むタイプの胃カメラをやった。

ほかにはどこにも異常はなかったのだが、胃だけはいつものように「慢性胃炎」という診断が出た。

それはいい。いつものことだ。だが、今回は「ピロリ菌陽性」と診断されてしまった。

胃炎や胃潰瘍、胃ガンの元凶とも言われるヘリコバクター・ピロリ菌が、僕の胃の中にはウヨウヨと棲息していたのだ。

ピロリ菌陽性。実は意外ではなかった。

僕のふたりの弟は、ともにピロリ菌陽性と診断されて除菌をしていたから、兄である僕も陽性なんだろうなとは覚悟していたのだ。

で、除菌することになった。今は保険が効くし、ただ抗生物質を飲むだけだというから、問題はないはずだった。

しかし・・・。

なんと、抗生物質を飲んでいる1週間のあいだは、決して酒を飲むなと医師に言われてしまったのだ!!

1週間も酒が飲めない?

僕はたじろぎ、おののいた。

年に1度、人間ドックの健康診断を受ける前日だけは、いつも禁酒をしている。

だが、妻と僕にとって禁酒というのは、人々の想像を絶するような苦しみなのである。

まず、酒がないと妻も僕も食事ができない。本当に食べる気になれないのである。さらに、酒がないと妻も僕も眠ることができない。だから毎年、人間ドックにはたいてい夫婦とも一睡もしないで臨むということになる。

1日だって地獄の苦しみだ。それを1週間続けるだって?

考えるだけで寒気がした。

だが、胃ガンになるよりは、酒の禁断症状に苦しんだほうがいいに決まっている。医師の言うとおり、禁酒をすることにした。妻は関係ないのに、ありがたいことに僕の禁酒に付き合ってくれることになった。

そんなふうにして、禁酒の日々が始まった。

禁酒1日目・・・夫婦とも、あまり食べられない。朝までほとんど眠れない。

禁酒2日目・・・やはり夫婦とも、ほんの少ししか食べられない。やはり朝までほとんど眠れない。

禁酒3日目・・・やっぱり夫婦とも、ちょっぴりしか食べられない。睡眠不足のはずなのに、やっぱりどうしても眠れない。

で、4日目にインターネットで、「なぜピロリ菌の除菌中は酒を飲んではいけないのか」を調べた。

すると、酒を飲むと抗生物質によるアレルギーの症状が出やすくなるからだとわかった。つまり酒を飲んでも除菌そのものには影響はないということだ。

少なくとも妻と僕はそう解釈した。そう解釈したかったのだ。

人間は何でも自分に都合のいい解釈をする生き物である。

酒の禁断症状に苦しむより、アレルギーに苦しんだほうがいい。

僕はそう決めて、4日目からお酒を再開した。

いやー、おいしかった。本当においしいお酒だった。おまけに、たっぷり食べることもできたし、ぐっすり眠ることもできた。その上、ありがたいことに、アレルギーは出なかったのだ!!

1週間後、再び医師のところに行った。

「禁酒できましたか?」

優しそうな医師がきき、僕は「はい」と小声で答えた。

嘘をつかないというのが僕の信条だったが、「いいえ」とは答えられなかった。

医師は優しく微笑むと、「よく頑張りましたね。それでは、今夜からは飲んでいいですよ」と言った。

胸が痛んだ。

嘘をつくのは、嫌なものだ。

さて、除菌が成功したかどうかがわかるのは、2ヶ月後だ。果たして僕の胃の中のピロリ菌は絶滅したのだろうか?

それにしても、瀬戸先生、嘘をついてごめんなさい。もう嘘はつきません。だから、僕に禁酒だけは命じないでください。

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