Diary 雑記

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町田市の妹の家に引っ越して来て3ヶ月がたち、ようやく僕たち夫婦もここでの生活に慣れた。

休み時間と放課後と休日のガキどもの大声には相変わらず辟易しているが、以前ほどは気にならなくなった。

ゴミ出しの問題も今ではだいたい解決した。

慣れてしまえば、ここはなかなか住み心地のいい家である。

目の前が小学校の校庭というのも、考えようによっては悪くない。北側に家が一軒あるだけだから、見晴らしはいいし、風通しもいい。二階からの眺めもいい。僕の小学校の時からの友人である建築家の渡辺康くんも、「環境がいいねえ」と褒めてくれた。

この家にはお客さんがたくさん来る。以前から妻は自宅に客を招くのが好きなのだが、平塚のマンションはとても狭かったし、都内からとても遠かったから、招きたくても大勢は招けなかったのだ。近所に住む妻の友人(平塚で同じマンションに暮らし、今もたまたますぐ近くに住んでいる)、前述した建築家の渡辺くん、僕の中学・高校・大学の時の友人、サラリーマンだった頃の同僚、角川書店や光文社の編集者たち、妻と僕の母、妻の姉・・・毎週のように、お客さんがやって来て、そのたびに妻が料理の腕をふるう。僕は何本もワインを開ける。それはとても楽しいひと時である。

この家には狭いながらも庭がある。妻はそこで野菜を育てている。完全有機無農薬の野菜である。毎日のように、妻はそれらを使って料理を作る。採って来た野菜をすぐに料理するから、とても新鮮で味も抜群だ。

ここに越して来てから、妻はなぜか、以前にもまして料理に手間と時間をかけるようになった。一日の大半を料理に費やしていると言っても過言ではないほどだ。妻は野菜だけではなく、豆腐を手作りし、チーズを手作りし、餃子の皮まで手作りしている。それらを食べるのは、僕にとって、一日の最大の楽しみでもある。

仕事に飽きると(僕は10分以上続けて机に座り続けることができません)、僕は煙草を吸うために庭に出る。そして、我が家のフェンスのすぐ向こうの小学校の校庭に生えている柿の実に集まる鳥たちや、赤や黄色に葉を染め始めた木々を眺める。小学校のガキどもの中には人なつこいのがいて、わざわざフェンスのところまでやって来て、煙草をふかしている僕に、「こんにちは」と挨拶をして来たりもする。その中には、小学生とは思えないような大人びて可愛い、ミニスカートの女の子もいたりする(僕はロリコンではないので、ご心配なく)。

夕方になると、妻と僕は近所へ散歩に繰り出す。この辺りは閑静な住宅街だから、散歩をするにはうってつけだ。特に「つくし野」には、ホテルか旅館かと思うような豪邸が建ち並んでいる。

「いったい、どんな仕事をしたら、こんな大豪邸を建てることができるんだろう?」

妻と僕はそう言って、首を傾げ合う。

日が沈むと、小学生たちも帰宅し、我が家は山の中の一軒家のようにしんと静まり返る。聞こえるのは、今はもう微かになった虫たちの声だけである。

「まるで別荘に暮らしているみたいね」

ことあるごとに、妻はそう言っている。

早ければ、妹夫婦は4年で帰国することになっている。そうなると、僕たち夫婦はこの家を立ち退かざるを得ない。

以前は早く帰ってくればいいのにと思っていたのに・・・今では彼らが定年まで帰って来ないことを祈ったりしているのであります。人って、勝手な生き物ですね。

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