Diary 雑記

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英国人語学講師の女性の死体を遺棄した容疑で逮捕された市橋容疑者の部屋に、僕の『殺人勤務医』があった(表紙だけ?)という報道が、テレビやスポーツ新聞、週刊誌などで頻繁にされているという。僕はテレビは見ないし、スポーツ新聞も週刊誌も読まないが、いろいろな人から伝え聞いた。

市橋容疑者が実際に『殺人勤務医』を読んでいたのかどうか、僕は知らない。

もし読んでくれていたのだとしたら、感謝こそすれ、彼を恨む気持ちはまったくない。

読者には作家を選ぶ権利があるが、作家には読者を選ぶ権利などない。

あの本を読んで、彼が何を思ったのだろう・・・と想像してみることはある。だが、彼に対して、特別な思いはない。

ただ・・・もし彼が本当に罪を犯したのだとしたら、その償いをしてほしいと願うだけである。

一連の報道をしたマスコミにも、言いたいことは何もない。

僕はこんな作風だし、『殺人勤務医』は表紙も内容もそれなりにグロテスクで過激なので、マスコミが猟奇的な犯罪行為と結びつけて報道したいと考えるのは、しごく当然のことである。きっと僕がテレビ局に勤務していたとしても、あの本と犯罪者の心理を結びつけて、おもしろおかしく報道しているに違いない。

実はこの件が公に報道される前日に、角川書店から僕は連絡を受けていた。

その時に思ったのは「ああっ、ついに来た」ということだった。

そう。繰り返すようだが、僕はこういう作風だから、きっといつかこんな時が来るとは、以前から予想していたのだ。

明日からきっと、抗議のメールや誹謗中傷のメールが殺到するんだろうな。もしかしたら、学校図書館から僕のすべての著作が排除されることになるかもしれないな。

僕はそう思った。そして、その覚悟もした。小説家を辞めたあとの仕事にまで思いを巡らせた。

けれど・・・驚いたことに、翌日から僕のパソコンに届いたのは読者のかたがたからの励ましのメールばかりで、僕を非難するメールはただの一通もなかった。

「大石さん、大丈夫ですか?」

「応援してます」

「気にしないほうがいいですよ」

「こんなことがあったからって、作風を変えたりしないでくださいね」

そういうメールを読むたびに、嬉しくて涙ぐみそうになった。

友人たちからも、「災難だったな」「気にするな」というメールが何通も届いた。それもまた、ありがたかった。

今回の騒動は、迷惑と言えば、確かに少し迷惑だった。けれど、こんなことがあったからこそ、読者のみなさまの気持ちや友人たちの優しさに触れることができた。そういう意味では、市橋容疑者に感謝したいほどだ。

心配していただいたみなさま。僕は大丈夫です。優しいお心づかい、ありがとうございます。これからも真摯に書き続けます。ぜひ、応援してください。

マスコミの対応に当たっていただいた角川書店のみなさま。ご迷惑をおかけしました。そして、いろいろとありがとうございました。

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