Diary 雑記

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少し前のこと。僕は妻とふたりで、東京都と神奈川県の境を流れる「境川」という川の遊歩道を散歩していた。

すると、年配のご婦人とその娘さんらしき女性から、「黒くて大きな犬を見かけませんでしたか?」と訊かれた。どうやら、散歩中に逃げ出してしまったらしい。

僕たちは見かけていないので、「見ていません」と答えて別れた。

別れる前に一瞬、僕は彼女たちの電話番号を訊こうかな・・・と思った。

だが、訊かなかった。

のちに僕は、そのことを後悔することになる。

さて、散歩が終わり、自宅に帰る途中・・・妻と僕は偶然、その犬らしき「黒くて大きな犬」が歩道に佇んでいるのを見かけた。つやつやとして毛づやのいい黒のレトリバーの若犬である。

「あっ、きっとあの犬だ」

僕たちがそう思ったその瞬間、犬はなんと、ふらふらと車道に歩き出した。そして、あろうことか、走って来たクルマにはねられてしまったのだ!!

犬は悲鳴を上げて反対側の歩道まで行き、そこでばったりと倒れた。前足をひかれたようだった。

妻と僕は大声で叫びながら両手を広げてクルマを止め、倒れた犬に駆け寄った。

けれど、犬は次の瞬間には立ち上がり、悲しげな悲鳴を上げながら3本脚で走り去ってしまった。

僕たちは必死で跡を追った。だが、犬はとても速くて、途中で見失ってしまった。その後、付近を懸命に探したが見つからなかった。

僕たちは激しく動揺しながらも、河原の遊歩道に戻った。そして、今度は、さっきのご婦人たちを必死で探した。

だが、ご婦人たちも見つからなかった。

その後、僕たちは今度はクルマで現場に戻った。もし、傷ついた犬を見つけたら、動物病院に運び込むつもりだった。だが、犬は見つからなかったし、ご婦人たちとも出会えなかった。

翌日から僕たちは、5日連続で河原に通った。だが、やはり、犬にもご婦人たちにも巡り会うことはできなかった。

河原には迷子になった犬猫を探す紙がたくさん貼ってある。妻と僕はそれらの中に、あの犬を探しているという張り紙を見つけようとした。けれど、いまだにあの犬を探す張り紙はない。

「きっと家に戻ったか、家の人に見つけてもらえたのよ」

妻はそう言っている。僕もそうだと思おうとしている。そして、いつか、また境川の遊歩道で、あの犬を連れたご婦人たちに会いたいと切望している。

さて、その数日後。

僕たち夫婦はまたしても境川に散歩に向かった。その途中、妻が「あっ」という大声を出した。

なんと・・・狭くて細い道の真ん中んで、何か薄汚れた小さなものがもがいていたのだ。

その時、クルマがやって来た。

「止まってーっ!!」

次の瞬間、妻は勇敢にもクルマの前に飛び出し、両手を広げてクルマを止めた。

そのあいだに、僕は道の真ん中でもがいていた生き物を拾い上げた。

それはムクドリだった。

けれど、その鳥はムクドリには見えないほど、ベタベタとしたものに全身を覆われていた。両方の脚にもたくさんの糸くずのようなものが絡まっていて、歩くことも飛ぶこともできない状態だった。

どうしたらいいんだろう!!

僕たちは激しく動揺しながらも、ベタベタのムクドリを布の袋に入れて自宅に向かった。途中で電信柱に動物病院の看板があったので、そこに「傷ついたムクドリを拾った」と電話をした。

すると、動物病院は休み時間だったにもかかわらず、受付の女性が「すぐに連れて来てください」と言ってくれた。

それで僕たちは急いで自宅に戻り、その動物病院にクルマで向かった。

けれど、僕は心の中で、「どうせ助からないだろうな」と思っていた。ムクドリはそれほど弱っているように見えたのだ。

さて、動物病院では若くて優しそうな獣医師と、若くて可愛らしい女性看護師さんがムクドリを診てくれた。幸いなことに、その動物病院にはしばしば、こんな傷ついた野鳥たちが運び込まれて来るらしく、獣医師も看護師さんもとても慣れた感じだった。

獣医師によれば、たぶんムクドリは窓ガラスか何かに激突して地面に落ち、コールタールのようなものにまみれてしまったらしい。

ムクドリが窓ガラスに激突し、コールタールにまみれてしまったのは、もう何日も前のことのようで、獣医師でさえ、「よく今まで生きていられたなあ」と驚いていた。

歩けず、飛べずで、どうやって生き延びたのだろう? その何日か前には雪も降ったというのに!!

幸いなことに、ムクドリは僕が思っていたほど重傷ではないようで「野生に戻れるかどうかはわかりませんが、命には別状ないでしょう」ということだった。

妻は自宅でそのムクドリの看病をしたがっていた。だが、それは許されないことのようで、すぐに町田市の野鳥保護員が引き取りに来てくれることになった。

「良かった!!」

妻は言った。本当に嬉しそうだった。

そう。妻の勇敢さがなければ、あのムクドリはあの時、クルマにひかれて即死していたかもしれない。僕はつくづく妻を見直した。

その後、あのムクドリがどうなったのかはわからない。だが、僕たち夫婦は、ムクドリが無事に野生に戻れることを心から願っている。

はい。そんなふうにして、最近の僕たちは動物たちに振りまわされていました。

二度あることは三度あるというから・・・また何か起きるのかなあ?

もう何もないといいのですが・・・・。

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