Diary 雑記

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10日あまりのあいだ、バリ島に行っていた。

一応、幻冬舎への新作のための取材旅行という名目だったのだが(この作品は南の島が舞台です)、心の中では少しのんびりと羽を伸ばすつもりでいた。

去年の4月にサイパン島に行った時には、向こうのホテルでも「甘い鞭」の推敲と、「呪怨・白い老女&黒い少女」の執筆を続け、ほとんどバカンスなどできなかった。だから、今度こそ、「プールでビール」のリゾートライフを楽しむ気だった。今年は1月6日から仕事を始め、ほとんど1日もオフを取っていないから、そのくらいの贅沢は許されるのではないかと思ったのだ。

けれど、幻冬舎に執筆していた長編小説がどうしても脱稿できず(当初は1月末の脱稿を目指していたのだが・・・)、今度もまた、バリ島で執筆をするはめになってしまった。

今回、僕たちが宿泊地として選んだのは、バリ島のウブドゥ村にあるリゾートホテルだった。このホテルでは、客室はすべてヴィラになっていて、広々としていて、とても静かだった。僕たちのヴィラもまた、広々とした庭のある素敵な部屋で、ベッドルームの中央には白いレースのカーテンが下がった天蓋付きの大きなベッドがあった。大理石の床は鏡のように光っていて、とても清潔だった。

それなのに・・・そんなゴージャスな部屋にチェックインしたというのに、ホテルに着くなり僕はワープロに向かった。そして、庭のガゼボに横になってマッサージを受けたり、プライベートブールで泳いだりしている妻を尻目に、毎日、毎日、日本にいる時以上に仕事に励んだ。

食事の時に部屋を出ると、水着姿でくつろいでいる楽しげな観光客たちが目に入る。プールバーのウェイトレスやウェイターは、通りがかりの僕にしきりにビールやトロピカルカクテルを進める。夜は近くの村から、ケチャダンスやレゴンダンスの音楽が聞こえて来る。

ああっ、プールサイドでビールやカクテルを飲みたい・・・ケチャやレゴンを見に行きたい・・・。

そんな欲望を必死で振り払い、僕は自分のヴィラに戻ってワープロに向かった。

だが、その甲斐あって、3月16日、バリ島の新年ニュピの晩に、幻冬舎への新作をついに脱稿した。それだけでなく、バリ島に滞在中にこの小説の推敲までし、「特選小説」の臨時増刊号への官能短編小説のプロットまで書き上げた。

「あなたって、本当に仕事好きね」

秘書兼通訳として同行した妻が呆れたように言った。

確かに僕は小説を書くのが好きだ。それは間違いない。それでも、南の島に来た時ぐらいは、のんびりと過ごしたいというのが本音だ。

けれど、僕は書くのがとても遅いので、とてつもなく長いあいだワープロに向かっているしかないのだ。

仕事、仕事、仕事・・・旅はそれだけで、あっという間に終わってしまった。

今回の旅は、本当に仕事ばかりの日々だった。それでも、夜にホタルの舞う広大な水田の中を、カエルの大合唱を聴きながら妻と散歩をするのは素敵だったし、夜空を埋め尽くした星を妻と見上げているのも楽しかった。それだけでも、いい旅だったと思うようにしよう。

はい。そして、帰国後は、さらに必死で書いております。相変わらず、執筆の速度はカタツムリのように遅くて、本はなかなか出ませんが、みなさま、どうぞ見捨てないでください。出版社のみなさま、いつもいつもご迷惑ばかりかけてすみません。決してさぼっているわけではないので、お許しください。

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