Diary 雑記

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先日、庭木の剪定をしていたら、家の東側にあるハナミズキの樹の1本の上に鳥の巣のようなものを発見した。いつも僕が座っている机のすぐ右には窓があるのだが、その窓のすぐ外に生えている樹の上、家の中から手を伸ばせば触れることができるような場所にである。

でも、その時は、別に何も思わなかった。その巣はかなりいい加減な作りだったから、きっと去年か一昨年の古い巣なのだろうと思ったのだ。

けれど、そうではないようだった。

その後、その巣に一日に何度も、藁のようなものをくわえたヒヨドリの夫婦が入れ替わり、立ち代わりやって来た。白いビニールの紐みたいなものも運んで来た。そして、ヒヨドリたちが往復を繰り返すたびに、巣は少しずつ、少しずつ立派なものになっていった。

そうなのだ。ヒヨドリの夫婦は、これからそこで卵を産み、ヒナを育てるつもりなのだ。

生き物好きの妻と僕にとって、それは大事件である。さっそくその日から、夫婦による「ヒヨドリの巣の観察」が始まった。

だが、子育て中で神経質になっているはずの鳥にとって、人にのぞかれるというのは面白いことのはずはない。

僕たちはヒヨドリ夫婦を刺激しないために、東側の窓にかかった2枚のブラインドを完全に下ろした。そして、巣をのぞく時には、そのブラインドを少しだけ動かすようにした。

僕はふだん、右手にある窓のブラインドを全開にしている。そして、そこから外を眺めながら執筆をしている。外を見るのはいい気晴らしで、その楽しみが失われるのは残念だが、ヒヨドリのためならしかたがない。お陰でヒヨドリたちは、僕たち夫婦にのぞかれているのに、いまだに気づいていないようである。

巣作りが終わったのは、たぶん、10日ほど前、7月20日前後だと思われる。その後、ヒヨドリ夫婦が卵を温め始めた(卵は目視できていませんが、巣の中にあるものと思われます)。

連日の猛暑の中、ヒヨドリたちは実に辛抱強く卵を抱いている。本当に暑いから、鳥たちは巣にうずくまって、いつも口を大きく開けている。その様子を見ていると、あまりの健気さに涙が出て来る。

「暑いだろうな」と僕。

「どこで水を飲んでるのかしら?」と妻。

心配になった僕たちは、飲み水用&水浴び用に、庭に水を張った皿を置いた。けれど、ヒヨドリたちは、そこでは水を飲むことも、水浴びをすることもなかった。

僕たち夫婦は、ヒヨドリ夫婦が熱中症で倒れてしまうことを心から心配した。

だが、先日、ヒヨドリたちはびしょ濡れになって戻って来た。たぶん、前の小学校のプールか近所の庭の池で水浴びでもして来たのだろう。

ヒヨドリたちを刺激しないために、僕たち夫婦は家の東側はなるべく歩かないようにしている。二階の東側の窓も、なるべく開閉しないようにしている。

僕は昨日、ヒヨドリたちの栄養補給のために、庭の餌台にふたつに切ったオレンジを置いた。だが、今現在、彼らがそれを啄んだ形跡はない。

昨日、最後に巣を確認したのは午後6時45分ごろ。辺りはかなり暗くなっていた。

ヒヨドリはどうしているんだろう?

その5分ほど前にのぞいたばかりだというのに、僕はまた椅子から立ち上がり、ブラインドの隙間から外をのぞいた。

うん。今もヒヨドリは巣の中にいる。もうクチバシは閉じて、上を向いている。今夜はこのまま、卵を抱いて眠るつもりなのだろう。

僕が巣をのぞいていると、すぐに妻がやって来た。そして、僕と一緒に巣をのぞいた。

「ヒナはいつ生まれるのかしら?」

「いつなんだろう?」

さて、きょう(7月29日)は朝から雨である。

風も強く、時折、雨脚も激しくなる。

もちろん、いつもそうしているように、僕たち夫婦は目覚めるといちばんで巣をのぞいた。

いるいる。滴る雨に濡れながら、じっと卵を抱いている。風にゆらゆらと揺れる巣の中で、卵が孵化するのをじっと待っている。

「雨で大丈夫なのかしら? 冷たくないのかしら?」

妻は心配そうである。

「樹が揺れて、卵が落ちないだろうか?」

僕もとても心配である。

でも、傘をさしかけてやるわけにもいかないし、樹が揺れないように支えの棒を立ててやるわけにもいかない。

僕たち夫婦にできるのは、期待に胸を膨らませながら、ヒナの誕生を待っていることだけである。

それにしても……5分おきに窓の外を見ていたら、仕事にならないなあ。続報は来月また。


追伸:「60秒の煉獄」の「あとがき」に土谷正実被告のことを書いたせいで、読者の方々から多数の問い合わせをいただいております。

土谷被告は、松本市の住宅街および都内の地下鉄内に撒かれた猛毒のサリンを製造した罪で逮捕・起訴され、一審・二審で死刑判決を受けております。

いまだに未決ではありますが、被告の裁判はすでに結審していて、年内にも最高裁の判決が言い渡されるかもしれません。

詳しいことについては、その判決後に書くつもりでおります。僕の立場も、その時にご報告させていただきます。ご了承ください。

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