Diary 雑記

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先月のこの欄にあんなことを書いたせいで、読者の方々にはかえって心配をさせてしまったようである。あの日から,僕のところには、これまで以上にたくさんのメールが届くようになった。

そういうメールのほとんどは、「こんな時だからこそ、大石さんが必要なんです」「こんな時でも大石さんの本を読みたいという人はたくさんいると思います」「避難所で『絶望ブランコ』を広げている人もいるはずです」というようなものだった。

ありがとうございます。みなさまのメールのひとつひとつが心に染みました。

考えてみたら、僕にはほかにできることはないのだから、せめて自分にできることを必死で続けたいと思います。メール、本当に嬉しかったです。

さて、実はゴールデンウィークが終わったら、横浜港から7万数千トンのアメリカ船籍の豪華客船に乗って、妻と初めての船旅に出かけるつもりでいた。

豪華客船での旅なんて、年寄りのするものだと思っていたから、まったく興味はなかったのだが、親戚のような付き合いをしている夫婦に執拗に誘われて、しかたなく行くことにしたのだ。

せっかくだから、客室は9階にある大きなバルコニー付きのスィートルームを予約した。右舷側の客室なので、窓から日本列島を眺めながら関西・四国方面へと向かうのである。

妻も僕も船旅なんてまったく期待していなかったにもかかわらず、旅が近づくと、少しだけ浮き浮きとしてきた。妻は船内でのパーティーや晩餐会で着るものや、その時につけるアクセサリーを思案し始めた。僕も何着かスーツなどを買い込み、靴もいくつか買う予定でいた。

豪華客船では、ブールで昼間からビールを飲み、夜は華やかな晩餐会である。その後はカジノでギャンブルである。そして、部屋に戻ったら、妻とふたり、バルコニーでワインやウィスキーを飲むのである。それはなかなかロマンティックにも思えた。

「何だか少し楽しみになって来た」

妻は言った。

そう。僕たちの期待は日増しに膨らんでいったのだ。

けれど、今回の震災の影響で旅は中止になってしまった。横浜港では船への給油ができないかもしれないから……というのが表向きの理由だったが、本音は放射性物質が怖いから日本へは近寄りたくない、ということのようだった。

はい。そんなわけで、僕はどこにも出かけず、家にこもってずーっと仕事を続けます。ふう。

追伸/去年の夏に我が家の庭のハナミズキで子育てをしていたヒヨドリ(だと僕たち夫婦は勝手に思い込んでいる)が、先日から向かいの小学校の樹の枝に営巣を始めた様子である。

今度こそ、無事にヒナたちが育つといいなあ。妻と僕は毎日、不安と期待に胸を膨らませて、ヒヨドリの様子を見守っています。

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