Diary 雑記

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6月24日から7月10日までの予定で、沖縄県名護市のホテルに滞在している。

来て早々に、島の最北部(やんばる)の国道をレンタカーで走行中に、現地の人でもめったに目にすることができないという「ヤンバルクイナ」を目撃した。地面をつつきながら路肩を歩いていたのだ。

クルマを止めて近寄り、夫婦で確かめたから見間違いではない。確かにヤンバルクイナだった。

そんなことがあったから、この沖縄滞在中には、「何かいいことがあるのではないか」と夫婦で期待していた。けれど、今日(6月30日)はとても不愉快なことに遇ってしまった。今回はその報告です。

今日の沖縄は東京より涼しかったから、僕たち夫婦は仕事を休んで、島の最南端の「平和記念公園」や「ひめゆりの塔」に行ってみようと思っていた。近くにはデューティーフリーショップもあるから、そこにも立ち寄るつもりだった。

午後0時半頃(正確には12:27)、僕は妻を助手席に乗せて、宜野湾市の国道58号(3車線の道路)を南に向かって走っていた。僕たちのクルマのすぐ前にはアメリカ軍の巨大な軍用トラックが2台、縦列して走行していた。ダンプカーよりずっと大きな迷彩模様のトラックである。

ちょうどクルマが宜野湾市の「沖縄アクターズ・スクール」の前に差し掛かった時のこと。

僕たちは3車線のうちの真ん中にいたのだが、目の前の2台の巨大トラックは相次いで、センターライン寄りに車線を変更した。そして、その車線変更の瞬間に、2台目の巨大トラックの右前方部分が、センターライン寄りの車線を走行していたピンク色の軽自動車の助手席のドアの辺りに激しくぶつかったのだ。

バーンというすごい音がした。

小さな軽自動車は2台の巨大トラックに挟まれるような格好で弾き飛ばされ、ぐるぐると回転しながら(横転はしていません)、僕の目の前を右から左に横切り、歩道の方向に吹っ飛ばされた。

僕は軽自動車に激突するのを辛くも回避し、すぐに路肩に停止した。アメリカ軍のトラックも停止すると思った。

だが、そうではなかった。

巨大な軍用トラックは、そのまま逃走したのだ!!

僕のすぐ後ろを走っていたタクシーが僕の脇で急停車し、中年の運転手が僕に「トラックを追いかけましょうか?」と尋ねた。

僕は「そうしてください」と運転手に頼み、大破した軽自動車に駆け寄った。

軽自動車に乗っていたのは、女の人だった。不幸中の幸いというべきか、クルマがあれほど壊れていたのに、その人には目立った外傷はないようだった。ただ、がたがたと震えていただけだった。

僕が110番通報をした直後に、たった今の事故を目撃した大勢の人が集まって来た。

大破したクルマを無視して逃走した軍用トラックに、誰もが強い憤りを抱いていた。僕も怒りに震えた。

「どうせ捕まりませんよ。やつらは、婦女暴行をしても、傷害事件を起こしても、盗みをしても捕まらないんですよ」

事故を目の前で目撃したという工事現場の労働者のひとりが僕に言った。

だが、追跡してくれたタクシー運転手の大活躍のお陰で、逃走した軍用トラックはすぐに捕まった。

僕たち夫婦もパトカーで現場に行き、それがまさしく逃走した車両だと確認した。運転していたのは若い白人の兵士だったが、彼は「覚えがない」とシラを切っているようだった。

それにも僕はカッとなった。僕は暴力には反対なのだが、あやうく米兵に殴り掛かりそうになった。

米兵が覚えていないはずなどない。

巨大トラックの右前輪には激しく擦った痕がくっきりと残っていたし、左前部には軽自動車のピンク色の塗料も付着しているのだ!!

あれほど大きな音がし、軽自動車はコマみたいに跳ね飛ばされたのだ!!

幸いなことに、鑑識の結果と、僕の証言は完全に一致した。これできっと、あの米兵は罪に問われることになるのだろう。アメリカの保険会社か米軍のどちらかが、あの女の人に賠償金を払うことになるのだろう。

これで一件落着だ。

その後、僕はさらに3時間も警察で事情聴取を受け(犯人が米兵なので、いろいろと面倒です)、今日は「平和記念公園」にも「ひめゆりの塔」にも、デューティーフリーショップにも行くことはできなかった。

だが、まあ、そんなことはどうでもいい。

許せないのは、あの米兵だ。

いや、そうではない。

僕がこうしてイライラしているのは、ほんの一部分ではあるけれど、沖縄の辛い現実を目の当たりにしたからなのだ。

「どうせ捕まりませんよ。やつらは、婦女暴行をしても、傷害事件を起こしても、盗みをしても捕まらないんですよ」

工事現場の労働者の諦めたような顔が、今も心に浮かぶ。

僕たち日本人は、沖縄県に米軍基地の大半を押し付けて幸せを享受している。そのことを思い知らされた一日だった。

「あんた、小説家なら、今、見たことをたくさんの人に伝えてください」

工事現場の労働者はそうも言った(駆けつけた警察官に職業を訊かれ、僕は「作家の大石圭です」と答えていた)。

だから、僕は今、これを書いているのだ。

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