Diary 雑記

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4月24日の午後のこと。

リビングダイニングルームの片隅に置かれた仕事机に座って、僕は妻と取り留めのないことを話していた。すると、急に妻が「あっ」と叫んで、僕の背後を見つめた。

僕は反射的に振り返り、背後にある窓の外に目をやった。そして、その瞬間、窓のすぐ外で茂っているキンモクセイの枝の中で、ヒヨドリが巣作りをしているのを発見した。

そのキンモクセイは、一昨年の夏、ヒヨドリが巣を作っていたハナミズキのすぐ隣に生えている(このdiaryの「75」「76」を読んでみてください)。ハナミズキよりさらに窓に近く、本当に執筆をしている僕のすぐ脇である。

「こんなところに巣を作ったら、また巣立ちと同時にカラスに食べられちゃう」

妻が心配そうに言った。

そう。一昨年の夏には、隣のハナミズキから巣立った2羽のヒナは、ほんの数時間後には、どちらもカラスの餌食になってしまったのだ。

あの時の僕たち夫婦のショックはひどかった。あれほどの衝撃を受けたのは、愛犬のピーナッツが死んでから初めてのことだった。

だが、ヒヨドリに「失敗するに決まっているから、そこに巣を作るのは止めろ」なんて言えるはずがない。僕たち夫婦にできるのは、ただ、見守ることだけである。

実を言うと、僕たち夫婦はそのヒヨドリ夫婦に対する思い入れが、とてつもなく強いのである。言ってみればその2羽は、「我が家の飼い鳥」みたいなものなのである。

この冬のあいだ(その前の冬もですが)、僕たち夫婦は1日に何度も庭に作った餌台に行き、ヒヨドリ夫婦にバナナやミカンなどを与え続けた。

2羽のヒヨドリは僕たちに実に良く慣れて、僕たちが午前10時に目を覚まし、カーテンを開けるとすぐに、どこからともなく餌台に飛んで来た(いつもどこかで、この家の様子を見張っていたようです)。そして、2羽でキーキーと甲高く鳴きながら、バナナやミカンを持って庭に出た僕たち夫婦の周りを、まるで天使みたいにぐるぐると飛び回った。

冬のあいだヒヨドリ夫婦は、ほとんど1日中、この家の近くにいて、空腹になると窓の外でキーキーと鳴いて僕たちに餌をねだった(首を伸ばして、窓から家の中を覗き込んだりもしました)。僕たちも自分たちを頼りにしているヒヨドリが可愛くて、可愛くて、冬のあいだは長く家を空けることができなかった。

3月21日には「そろそろ餌の必要はないだろう」と思って、バリ島に出かけたのだが、僕たちが4月1日に自宅に戻ると、ヒヨドリはちゃんと僕たちを覚えていて、またしても餌をねだった。そんな姿を見た僕たちは、長く家を空けたことを後悔し、ヒヨドリたちに「留守にしてごめんよ」と謝ったほどだった(今後は冬には旅行をしないと夫婦で決めました)。

そんなわけで、今では僕たちはその2羽のヒヨドリを、家族のように思っているのだ(一昨年、ヒナの巣立ちに失敗したヒヨドリと、今、我が家に巣を作っているヒヨドリが同一個体だという証拠はありませんが、僕たちはそうだと思い込んでおります)。

さて、その後もヒヨドリは夫婦でせっせと藁や白いビニール紐みたいなものをキンモクセイの樹の中に運び、巣作りを続けた。そして、たった4日ほどで驚くほど立派な「すり鉢型」の巣を作り上げてしまった。

巣が完成したあとのヒヨドリは、1日に数回戻って来るだけで、すぐにどこかに行ってしまう。だから、今日4月30日の時点では、まだ巣の中に卵はないのだろう(2階の窓から見下ろしたら、巣の中は空っぽに見えました)。

でも、そこでヒヨドリが産卵することに決めたのは確かである。たぶん、数日のうちには卵を産むのだろう。

一昨年の観察によると、抱卵開始から17日から19日でヒナが誕生し、1週間ほどで巣立ちの瞬間を迎えることになるはずだ。ということは……巣立ちは、5月の末頃という計算になる。

5月の末には、また、一昨年のような悲しい思いをすることになるのだろうか? それとも、今度はちゃんと巣立つことができるのだろうか?

こうしてこれを書いている今も、僕はすぐ脇にあるキンモクセイが気になってしかたがなく、半分開いたブラインドの隙間から、何度もヒヨドリの巣を見上げているのである。

この続報は、来月のこのコーナーでお伝えします。どうか、みなさまに、嬉しい報告ができますように!!

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