Diary 雑記

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運動不足の解消と気晴らしを兼ねて、妻とふたりでいつも近所の境川を散歩していた。だが、6月6日に妻が何気なく、「きょうは恩田川に行ってみない?」と提案した。

恩田川は鶴見川と合流し、東京湾へと注ぐ一級河川で、我が家から徒歩15分ほどのところを流れている(東京と神奈川のあいだを流れる境川も、徒歩15分ほどです)。

それで、その日は恩田川に散歩に行ったのだが……それ以来、僕たちはほぼ毎日、恩田川に通わざるを得なくなってしまった。

その理由は、カルガモのヒナである。

そう。恩田川にはヒナを連れたカルガモが何組もいたのだ!!

そんなわけで、6月6日以降、僕たち夫婦は恩田川に通い続けた。

僕たち夫婦が知る限りでは、カルガモのヒナは9組いた。たった1羽のヒナしか連れていない親鳥も1羽いたが、たいていは3~8羽を連れていた。中には10羽(!!)ものヒナを連れている親鳥もいた。

毎日、毎日、観察を続けていると、不思議な発見をすることも少なくなかった。

たとえば、1羽しかヒナを連れていない親鳥は、たいてい4羽のヒナを連れた親鳥の近くにいた。4羽を連れた親鳥は「こっちに来るな!!」と威嚇するのだが、ひとりっ子の親鳥は、なぜか、執拗に4羽のグループにくっついていた。それで、ヒナたちは時にはごちゃごちゃに混じり合ってしまい、5羽のヒナのグループのようにも見えた。

このひとりっ子の親鳥は、10羽のヒナのグループにくっついていることもあって、そういう時には11羽のヒナがいるようにも見えた。

なぜ、この親鳥がほかのグループにくっついていようとしたのか、それは今も不明である。

さらに10羽を連れた親鳥も、僕たちを不思議がらせた。

この10羽の親鳥を、僕たちはずっとメスだと思っていた(ほかのカルガモウォッチャーたちはみんな、親鳥を「お母さん」と呼んでいます)。だが、先日、この親鳥が近くに寄って来たカルガモの背中にいきなり乗って、交尾をするのを目撃してしまった。

ということは……この10羽の親は、オスなのだろうか(僕たち夫婦は、それ以降はこの親鳥を「お父さん」と呼んでいた)。

さらに、この10羽の親は、ヒナたちを激しく移動させた。ほかのグループはいつもたいてい同じ場所にいたのだが、この10羽のヒナだけは、小さな滝をいくつも上り下りしながら、上流へ下流へと絶え間なく移動を続けていたのだ(おかげで、発見に時間がかかりました)。

その場を動かないグループと、この10羽のヒナたちのように動き回るグループがいるのも、不思議なことのひとつだった。

さて、6月19日の深夜から20日の未明にかけて、関東地方に台風4号がやって来た。僕たちは19日の夕方に傘をさして恩田川に行ったのだが、その光景には悲鳴を上げそうになった。

川がものすごく増水していて、水から出ている部分がほとんどなくなっていたのだ。

ヒナたちはわずかに水面に顔を出している岩や、コンクリートの塊や、わずかに残った中州のようなところに身を寄せ合っていた。だが、間もなくそこも水中に沈んでしまいそうだった。

ヒナたちは危険がすぐそこに迫っていることに気づかないようで、のんきに羽づくろいをしたり、眠ったりしていた。だが、親鳥はみんな、不安そうに辺りを見回し続けていた。

これから暗くなる。そして、雨はいよいよ激しくなる。そうしたら……ヒナたちはみんな流され、暗がりでバラバラになって、親鳥とはぐれてしまう!!

僕はそう確信した。けれど、どうすることもできなかった。

天気予報の通り、深夜には雨は凄まじくなった。風もすごかった(我が家ではたくさんの植木鉢が割れました)。

ああっ、もうダメだ。きっとヒナたちは全滅だ。

絶望的な気分で僕は思った。妻も辛そうだった。

その晩の僕はカルガモのヒナたちが心配で、ほとんど眠ることができなかった。

翌日は晴れて気温が上がった。僕たち夫婦はさっそく恩田川に向かった。いつもは徒歩で行くのだが、その日は自転車で行った。流されたに違いないヒナたちを、川の下流のほうまで捜索に行くつもりだった。

僕が恐れた通り、ヒナたちはまったくいなかった。やはり、みんな流されてしまったのだ。

「自然って、厳しいのね」

妻が悲しそうに言った。

絶望に駆られながらも、僕たちは自転車で下流へと向かった。心の中では、少しでもいいから生き残っていてくれと願っていた。

僕たちは自転車をこぎ続け、そして……そして、ついに、10羽のグループを発見したのだ!!

そこは、前日、最後に彼らを確認した場所より300メートル以上も下流だった。ということは、そこに来るまでに、150センチほどの大滝を流れ落ちたはずだった。

けれど、ヒナたちは1羽も欠けることなく、10羽のすべてがそこにいた。

僕は思わず泣いた(本当に泣きました)。

これほど嬉しいと感じたのは、久しぶりだった。

僕たちはさらに自転車で下流へと向かった。すると、驚いたことに、顔なじみのグループを次々と発見した。どのグループもかなり流されてはいたが、どのグループも1羽も欠けていなかった。

その生命力の強さに、僕はまた泣いた。

さて、その後も僕たち夫婦は恩田川でのカルガモ観察を続けていますが、ヒナたちはみんな、すくすくと元気に成長を続けています。

早く生まれたらしいヒナたちは、もう親と同じくらいの大きさになっているのもいます。台風でみんな一度は下流に流されましたが、その後はみんな川をさかのぼり、ほぼ元の場所に戻っています。

というわけで、カルガモ観察の日々は、しばらくのあいだ続きそうです。

Diary list

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Diary:150〜159
Diary:140〜149
Diary:130〜139
Diary:120〜129
Diary:110〜119
Diary:100〜109
Diary:90〜99
Diary:80〜89
Diary:70〜79
Diary:60〜69
Diary:50〜59
Diary:40〜49
Diary:30〜39
Diary:20〜29
Diary:10〜19
Diary:1〜9
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