146:猫も似てくる
長く一緒に暮らしていると、夫婦の性格は少しずつ似てくると僕は考えている。
妻はどう思っているか知らないが、27年も一緒に暮らしてきたので、僕も少しずつ妻に似てきた(綺麗好きになったし、誠実になりました。あまり怒らなくもなりました)。
逆に妻は僕の影響で、かなり口が悪くなったらしい。
だが、似てくるのは夫婦だけではない。猫も似るのである。
かつての「お菊」は喜怒哀楽に乏しい性格だった。
「人なつこい」という言葉とは程遠くて、妻はいつも「何を考えているのか、さっぱりわからない」と言っていたものだった。
「お菊」にも甘えたいという気持ちはあるらしいのだが、それを表に出すことができなかった。
冬の夜は暖を取るために夫婦のベッドに飛び乗ってきたが、「お菊」がいるのはいつも僕たちの足元のほうだった。
けれど、犬のように人なつこいノボルと暮らすようになって4年半がすぎ、「お菊」は少しずつノボルに似てきた。かなり人なつこく、かなり甘えっ子になってきたのだ。
かつての「お菊」は来客があると、どかこに隠れてしまって、客が帰るまでは絶対に姿を現さなかった。
だが、今はノボルと一緒に客たちを出迎え、彼らがいるあいだはずっと近くにいる(ノボルは勝手な性格なので、眠くなるとどこかに消えてしまいます)。
僕たち夫婦に対する「お菊」の態度も、この4年半で大きく変わった。
ノボルが甘えていると、「わたしにも甘えさせて」とでもいうように、近づいて来るようになったのである。
かつての「お菊」は触られるのが大嫌いだった。
けれど、触られるのが大好きなノボルの影響か、今は触られてもあまり嫌がらなくなった。それどころか、自分のほうから、「触って、触って」と、すりすりと体を擦りつけてくることもある。
今、「お菊」は毎夜、僕たち夫婦の枕のあいだに身を横たえている。
僕が頭を撫でてやると、ゴロゴロと大きな音を立てて喉を鳴らす。
「お菊」が喉を鳴らすなんて、かつては考えられなかった(ノボルは誰かが触るたびに、大きな音を立てて喉を鳴らします。動物病院では医師が聴診器を使っているあいだ看護師さんが押さえているので、それが嬉しくてゴロゴロと喉を鳴らし続け、医師から「ゴロゴロがやかましくて、心音がよく聞こえない」と言われてます)。
妻や僕が一階のテラスや屋上バルコニーに出るたびに、ノボルは走ってついて来る。そんなノボルの背後には、いつも「お菊」の姿があるのである(かつては一日に50歩ぐらいしか歩かなかったのに、ノボルが来てからの「お菊」はかなり走り回るようになりました。おかげで中年太りとは無縁です)。
「お菊」とノボルは、今も「大の仲良し」という感じではない。
ノボルは一日に何度となく「お菊」にじゃれかかり、「ふざけっこ」をしたがるのだが、「お菊」にはそれが鬱陶しいようで、いつも逃げ回っている。
それでも、ノボルが眠っていると退屈なようで、わざわざ近くに行って起こしたりしているのである(ノボルが眠っている時は、僕たち夫婦にとっては安らぎのひとときなので、できれば起こしてほしくないのですが)。
午後、二頭の猫どもはしばしば、寄り添うようにして眠っている。
そんな姿を見ていると、僕たち夫婦も幸せな気持ちになるのです。
猫二頭との暮らし、いいものです。この幸せが末永く続きますように。にゃーお。
追伸/今回も写真のほとんどは猫シッターのY子さんの撮影です。