Works 作品紹介

甘い監獄 絶賛発売中!

角川ホラー文庫
2014年3月25日発売
定価(税別):600円

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甘い監獄

夫婦を題材にした中編小説4編を収めた作品集です。

どれもこの本のために書き下ろした未発表作品です。

『いじめたくなる女』

父が経営する内科医院に勤務する慶太(32)は、明るくて朗らかで、患者思いの好青年だ。彼は両親に強く勧められて嫌々ながら見合いの会場に向かう。慶太には結婚する気などまったくなかったが、両親に押し切られてしまったのだ。見合いの相手は、父の知り合いの獣医師の次女・双葉だった。

初めて会う双葉(30)は、驚くほどに地味で冴えなかった。彼女は無口で内気で、引っ込み思案なだけではなく、容姿もファッションセンスもパッとしなかった。その上、双葉は極端に小柄で、小学生のような体つきをしていた。

そう。双葉はこれまでに慶太が付き合って来たモデルのような女たちとは、正反対と言ってもよかったのだ。

それにもかかわらず……無口で小柄な双葉を目にした瞬間、慶太の中に身を潜めていた残虐な欲望が疼いた。自分の中にそんな欲望が潜んでいたということを、慶太はその日、初めて知った。

よし、この女と結婚しよう。

見合いの席で、慶太は即決する……。

ごく普通に見える男の中に身を潜めていた暗い欲望を描いた作品です。ネタバレになってしまうので書きませんが、どんでん返しもあります。

『愛されすぎた男』

僕としては珍しいコメディタッチの作品です。

主人公は美容室でパートタイマーの助手として働く千草と、その夫の「菊ちゃん」。語り手は美容室の経営者である桜子。桜子の目を通して、一般には理解しがたいような千草と夫の日々を描きました。

桜子(50)の助手として美容室で働いている千草(40)は、小柄で色黒で、化粧っけもない冴えない女だ。彼女は働いているあいだずっと、夫(40)に関する愚痴を言い続けている。千草の夫の「菊ちゃん」は、とてつもなく手がかかる男のようなのだ。

千草は毎日、毎日、飽きることなく「菊ちゃん」の愚痴を桜子に言い続けている。それは美容室に通って来る多くの中年女たちとまったく同じだ。

けれど、どういうわけか、千草の愚痴は、桜子には「おのろけ」にしか聞こえない。それはまるで自慢をしているかのような口ぶりなのだ。

いったい、「菊ちゃん」はどんな男なのだろう?

好奇心に駆られた桜子は、無料でカットしてあげると言って千草の夫を美容室に招く。店に入って来た「菊ちゃん」を見た瞬間、あまりの驚きに桜子は茫然としてしまう……。

変わった愛の形を描いた作品です。思い切り笑っていただけると幸いです。角川書店の担当編集者が「いちばん好きだ」と言ってくれた作品でもあります。

実はこの作品、僕の友人夫妻がモデルなのです。こんな夫婦、本当にいるんですね。

『妻への疑惑』

紘介(35)は大手企業に勤務するシステムエンジニアだ。5年前に結婚相談所の紹介で知り合った妻の香苗(30)とふたりの息子の4人で、東京郊外のマンションに暮らしている。

香苗は地味で無口で、ファッションセンスもない冴えない女だが、妻としても母親としてもよくやっていた。毎日は平凡で、ありきたりで、刺激のようなものはまったくなかったが、その暮らしに紘介は満足していた。

そんな紘介の元に、ある日、一通の手紙が届く。

その手紙の内容は紘介を驚愕させた。そこには妻の香苗のおぞましい過去が綴られていたのだ。それだけでなく、香苗は今もスポーツクラブで出会った年上の男と不倫の関係にあるというのだ。

その日から、紘介の中に妻への疑惑が沸き上がる。悶々とした日々を何日か過ごした末に、ついに紘介は調査会社に妻の素行調査を依頼する。

あの手紙のことはデタラメであってくれ。

紘介は必死で願う。一週間後、調査会社からの報告が届く。その内容に、紘介は再び驚愕する……。

夫は妻のことを、そして、妻は夫のことを、どれほど知っているのだろう?

そんなことを思いながら書きました。

『他人の妻、他人の夫』

光太郎(45)が静枝(42)と結婚して、間もなく10年になる。子供はできなかったが、ふたりはそれなりに幸せな日々を送っていた。経済的にもそれなりには満ち足りていた。

若かった頃と同じように、静枝は今もとても綺麗でスタイルがよく、ファッションセンスも抜群だった。彼女は自分を美しく装うのが好きなだけでなく、家の中もいつもお洒落で清潔に保っていた。

結婚してすでに10年が経っていたから、燃えるような愛情を感じることはなくなっていた。それでも、光太郎は妻が自慢だったし、彼女を愛してもいた。

そんな夏のある日、静枝が光太郎に言った。

「ねえ、夫婦交換をしてみない?」

光太郎は耳を疑った。冗談だろうと思った。

けれど、静枝は本気のようだった。

「わたし、またセックスで感じたいの。昔みたいに燃え上がりたいの」

静枝はそう続けた。彼女はすでにもスワッピングの相手を捜しているようだった。

スワッピングだなんて……光太郎は反対した。そんなことは絶対に嫌だった。

けれど、「嫌なら離婚する」と言う静枝に押し切られて、光太郎はその提案に渋々ながら応じることにした。

夫婦交換に臨む2組のカップルを描いた作品です。自分自身では、この作品集の中でもっとも僕らしい作品なのではないかと思っています。

渾身の力を込めて書いた作品集です。ぜひ、手に取ってください。

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